15年の歴史に幕 桃花台新交通「ピーチライナー」に乗る
それでは、再び名古屋方面への遠征記です。
9月23日の午後、急行「くずりゅう」撮影後は、米原経由で名古屋方面へ向かい、愛知県小牧市を走る新交通システム「ピーチ-ライナー」に乗ることにした。この「ピーチライナー」は、「ゆりかもめ」などで御馴染みの新交通システムで、名鉄小牧線の小牧駅と桃花台ニュータウンの中にある桃花台東を結んでいる。1991年に開業した比較的新しい路線であるが、なんとこの線が今月いっぱいで廃線となってしまうのだ。開業以来からの累積赤字と、施設面の老朽化などの理由から廃止に踏み切ったものと思われるが、全国に数ある新交通システムの中でも、この「ピーチライナー」は不運な路線と言っても過言ではないだろう。
利用客が伸びなかった理由の一つに、運転区間が挙げられると思う。桃花台ニュータウンから「ピーチライナー」を利用して名古屋方面を目指したとき、接続する名鉄小牧線が一つのネックになった筈である。名鉄小牧線は、今でこそ、名古屋市営地下鉄の上飯田線と連絡して、名城線の平安通駅まで直通するようになったが、つい最近まで、中途半端な上飯田駅が終点であった。この上飯田駅と、名古屋市営地下鉄の平安通駅とは、約1キロほど距離があり、長年に渡り、通勤客は、この両駅間を歩かされた。この徒歩連絡が、利用客にはかなりの負担となる。私も、名古屋から大曽根・平安通経由で小牧まで電車で移動したが、最終的に桃花台東まで乗りとおすと、名古屋駅から1時間ほど掛かった。この日の夕方、金山で開かれた某サークルの宴会に出た際、桃花台から高速バスで名古屋に出たと言う人の話を聞いたが、高速バスなら45分ほどで辿り着けると聞き、「ピーチライナー」が桃花台ニュータウンの足として機能していない事がよく理解できた。
さて、話を「ピーチライナー」の乗車レポートに戻そう。平安通駅から新しくなった名鉄小牧線に乗車し、小牧駅で下車する。名鉄の改札を出て右へ進むと、すぐに桃花台新交通「ピーチライナー」の改札口があった。私はトランパスを用意していたので、そのまま改札口へ向かう。廃止まであと1週間と言うのに、きっぷ売り場の前は比較的静かだった。地元の人よりも、各地から駆けつけた鉄道ファンの方が目立つ感じだった。トランパス対応にはなったものの、自動改札機は、対応できる新型機械が各駅1台しかないらしく、設備を見ても経営が苦しい事が伝わってくる。ホームに入って暫くすると、小牧止まりの列車が入ってきた。
桃花台東からの列車が小牧駅に到着。
この「ピーチライナー」は、一見するとご覧のように流線型の車両のように見えるが、実はこのデザインになっているのは片側だけ。列車の発着する小牧・桃花台東の両駅には、列車折り返し用のループ線が存在しており、終着駅に到着した列車は、そのまま前向きに出発して、ループ線に進入。ぐるっと回って折り返し列車となるのだ。その為、最後尾車両には入替用の簡易運転台が付いているだけなので、車両のデザインが前後で違う。そして乗降用ドアも進行方向右側だけに固定されるため、ドアは片側にしかない。
撮影を終えて、ループ線から戻ってきた列車に乗り込む。折り返しとなる桃花台東行きには、明らかに各地から乗り収めに来た鉄道ファンの方が多く見られた。とりあえず終点まで乗ってみることにしよう。小牧駅から暫くの間は、名鉄小牧線と併走する。名鉄も高架線だったが、廃線となる「ピーチライナー」が複線なのに、名鉄側は単線。このアンバランスな組み合わせには、何となく笑ってしまった。最初は街中を走っていたような感じだったが、途中から緑が目立つようになる。やがて桃花台ニュータウンの入口に近づくと、さすがにニュータウンだけあって家や団地が目立つようになってくるが、愛知県内らしく、ニュータウン内は道路が広く、どう見ても自動車が主体のニュータウンだ。これでは「ピーチライナー」に勝ち目は無いだろう。立派な地下駅の桃花台センターを過ぎると、車窓からは車両基地が見えてきた。
終点の桃花台東到着目前に見えてきた車両基地。
車両基地を通り過ぎると、まもなく終点の桃花台東。到着すると、乗客はいっせいにホームの端へ。ループ線での折り返しの様子をカメラに収める人が多かった。
折り返し運転に備えて、ループ線へと入り向きを変える。この駅では、簡易型運転台側もよく見る事ができる。
ここで、私は列車を1本落として、駅の外からも桃花台東駅の様子を撮影してみる事にした。
桃花台東駅の駅前ロータリーより「ピーチライナー」を撮影してみる。ホームに面していない側にはご覧のように扉も無い。
一昔前の武蔵野線のような感じの桃花台東駅改札口。トランパス対応機はここも1台のみ。
列車が出発した直後の桃花台東駅ホーム。
一通り撮影も終えたので、私は、次の列車で桃花台東を後にした。帰りは先頭車両の運転席の隣に座ってみた。ワンハンドル式の運転台で、一瞬見ると近代的に見えるが、デットマン方式となっていて、どこかに懐かしさを感じさせるような作りだった。私にとっては最初で最後の「ピーチライナー」の乗車体験は、こうして終了となった。
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コメント
おつかれさまです。ケガをしなければ、行きたかったんですが、結局間に合わなそうです。
それにしても、これだけの設備を作って、20年間保たずして廃止とはもったいないですね。やはり高架で作られた分、お金がかかりすぎたと言うことなんでしょうね。ただ、沿線住民から受け入れられなかったり、バスの方が利便性が良かったりすれば仕方がないということでしょうね。
投稿: ちろ | 2006/09/27 21:23
ちろさん、コメント有難うございます。
2年前の今頃は、私も足の怪我で涙を呑んだ覚えがありますので、他人事のようには思えません。くれぐれも大事になさってください。
さて、今回のピーチライナーの廃止ですが、やはり愛知県と言う場所柄も大きく影響しているのではないでしょうか。何しろ、終点の桃花台東の近くには、中央自動車道の桃花台バス停があります。ここから高速バスに乗れば、名古屋までは鉄道よりも早く到達できますし、ニュータウン内の道路も充分に整備されていますから、鉄道より車の町ですね。
でも、こんな事は建設する段階から解らなかったんでしょうか。また、計画段階で名鉄小牧線ではなく、中央線に繋げていれば、少しは条件が変わったのか・・・ まあ、世の中に「たられば」は通用しませんから、この辺で終わりにしておきましょう。
投稿: TOMO | 2006/09/27 23:42
個人的には東京、大阪、横浜もあるんだからウチもってな具合で無計画に作ったのではとも思います。
名古屋は反省したのかリニアの地下鉄は手を出しませんよね。リニア地下鉄なにも地方都市まで進出することはないだろうに。
投稿: SATO | 2006/09/28 00:51
こんにちは。
8月に名古屋に行った時に乗り納めをするつもりでしたが、
結局時間が取れず、乗ることができませんでした。6、7年前に
1回乗ったのが最初で最後ということになりそうです。その時も
空いていました。
廃止後、設備がどうなるか気になるところです。普通の鉄道
なら道路や遊歩道になることも少なくないですが、高架区間で
あるため、そのままでは転用するのは難しそうです。取り壊し
の可能性もありそうですね。
投稿: GO | 2006/09/28 21:46
こんばんは。桃花台も今月で終わりでしたね。新交通システムが廃止になるとは思いもよりませんでしたが、やはり運転区間の悪さが影響したことは否定できませんね。
私が乗ったのは今から5年前の7月、今はなき「ワイド3・3・SUNフリー」を使って乗り潰してきました。やはり終着駅の桃花台のループはこの路線の"名物"といえますね。このループもあと3日で見ることが出来なくなってしまいます。
投稿: mattoh | 2006/09/28 21:51
こんばんわ。横浜電車です。
桃花台新交通、廃止ですか。で、中央案内式新交通システムは、ユーカリが丘線だけになってしまいますね。あと、名鉄の小牧線ではなくJR中央線につなげておけば、廃止にならなくて済んだのにね。
(中央線なら、名古屋まで直通だしね!!)
投稿: 横浜電車 | 2006/09/28 23:33
皆さん、コメント有難うございます。
SATOさん>
う~ん、まさにバブル時代の発想ですね。もし、そんな計画で作ったのだとしたら、まさに無計画の典型的な例ですね。
GOさん>
開業して20年も経っていませんから、地元以外の人は、おそらく廃止はしないだろうと思っていたでしょう。それだけに、本腰を入れて乗っていなかった方は多い筈です。私も「くずりゅう」が運転されなければ、おそらく一度も乗らずに終わってしまったと思います。
mattohさん>
乗り鉄派のmattohさんらしい乗り方ですね。確かに、この線に乗ろうとすれば、わざわざ乗りに行くというよりは、物のついでに乗っておこうという感覚の人の方が多いでしょうね。私も「くずりゅう」の運転が無ければ、廃止が解っていても乗らなかったと思います。
横浜電車さん>
ユーカリが丘線も同じ方式の電車が運転されていましたね。ユーカリが丘線も、そろそろ施設面の老朽化が問題になって来る頃でしょう。採算は取れているのでしょうか。心配になります。
ピーチライナーですが、仮に中央線と接続していたとしても、名鉄小牧線より多少マシな程度で、経営面では苦しいかもしれませんね。今日でこそ、名古屋駅周辺も賑わっていますが、セントラルタワーズ開業前でしたら、やはり名古屋の中心は栄でしょうからね。栄まで直通できない路線につないでも、実際はどうかなと言う気はします。
投稿: TOMO | 2006/09/30 00:05
なかなかこういった、「都心に直結できない」路線はどこも苦しいと思いますよ。
例えば、総武流山電鉄が常磐線・千代田線直通で大手町まで乗り換えなしで行けたとしたら、ずいぶんと状況は違うのではないかと思います。
しかも名古屋圏というクルマ社会の真っ只中に置かれてはなおのことでしょう。
何年か後に「廃止はしたけど撤去しとかなくて良かった!」という日が必ず来ると思います。ガソリンが¥1000/㍑なんて日には。
だから無闇に解体しないほうが得策と思いますね。
投稿: クハ1193@球場 | 2006/09/30 11:02
はじめまして。わたしは24日の早朝に乗りました。
今までに廃線になった鉄道の大半がそうであったように、人の流れを無視した鉄道だったということですね。せめて、駅の位置がもう少し考えられた場所ならとも思いました。
投稿: くろ | 2006/09/30 12:20
こんにちは。私は、桃花台ニュータウンに住んでいます。こちらの記事に、トラックバックさせてもらいました。一応、「桃花台線」つながりです。
投稿: kyu3 | 2006/09/30 13:43
はじめまして。
コメントするのは初めてですが、大変興味深く拝見しております。
桃花台線の最終日に行ってきました。
早朝からかなりの人が集まっており、「廃止」という感じはしませんでした。
逆に言えば「お祭り」で乗りに来た人は本当に多かったです。
先のコメントでユーカリが丘線の話題が出ていましたが、こちらも赤字です。
それこそ「車両の寿命=路線の寿命」という気がしてなりません。
長いコメント失礼しました。
最後になりますが、貴ブログのアドレスを塀ブログのブックマークに追加させていただきました。
またよろしくお願いします。
投稿: Simplex | 2006/09/30 18:41
皆さん、コメント有難うございます。
クハ1193@球場さん>
仰るとおり、都心に直結できない路線というのは、全国的にも多いでしょうし、どこも苦戦しているでしょうね。それでも、首都圏や関西圏であれば、殆どが苦しいなりにもそれなりに頑張ってやっているところが多いです。今回の桃花台線は、やはり愛知県と言う場所柄、命取りになってしまったのではないかと思います。この桃花台線の設備の解体費用はどのぐらい掛かるのか、確かに気になりますね。
くろさん>
私とは1日違いでしたね。駅の位置、そうですね。確かに沿線の途中駅は、駅の場所があまりよくないような気もしましたね。あとは、これからの高齢化社会に向けてのバリアフリーの問題がもう少し進んでいればとも思いましたが、やはり手を加えなかったところからして、普段の利用率がなんとなく読めてしまいますね。
kyuさん>
地元住民の方ですね。ようこそお越しくださいました。こちらからもトラックバックを送信させていただきます。このコメントを書いているころには、もう桃花台線の運転は終了していますが、今後、桃花台線の高架橋などの設備は、どうするのか、確かに気になりますね。そのまま放置する訳にもいかないし、撤去するにも費用が掛かりますからね。
Simplexさん>
いつもご覧いただきまして有難うございます。最終日に桃花台線に行かれたんですね。やはり最終日も地元の人よりは、各地から集まってきた鉄道ファンのほうが圧倒的に多かったわけですね。
リンクの件、了解いたしました。こちらからもリンクを貼らせていただきますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
投稿: TOMO | 2006/10/02 12:57