東北の急行形電車 455・457系を堪能する
では、再び元日の東北遠征記のお話。
盛岡からの「はやて18号」を仙台で降り、仙台始発の「Maxやまびこ120号」で福島に着いた私は、急いで在来線ホームへと向かう。福島から乗車するのは、仙台行き臨時快速「仙台シティラビット75号」だ。仙台から新幹線で福島に来たのに、在来線で仙台へとんぼ返りとは、何とも物好きだと思われる方もいるかもしれないが、この臨時快速「仙台シティラビット号」には、数少なくなった交直流急行形電車が使用されるからだ。この快速は、福島を出ると、白石・大河原・岩沼のみの停車で、所要時間は1時間2分。往年の急行並みのスピードが楽しめるとあれば、急行形ファンとしては、どうしても乗っておきたいところ。今回の遠征で一番楽しみにしていた行程である。福島駅のホームで私を待ち構えていた電車は、とんでもない珍車だった。
福島から再び仙台へ。臨時快速「仙台シティラビット号」は、ご覧のようにヘッドマークが付く。
私を待っていたのは、仙台車両センターのS-71編成だった。この写真、クハ455側から撮影しているのだが、よく見ると、通常のクハ455には付いていないものが屋根上に付いているのだ。
この角度からもう一度。やはり通常のクハ455には付いていないものが一つ。
ちょうどドアの上の部分になるのだが、角型の通風器が付いているのがお解かりいただけるだろうか。角型通風器は通常だとクモハに付いており、これは、この車両が、昔、クモハだった証でもある。この車両、クハ455-402と言う車両だが、実は直流急行形電車の169系、しかも試作車の900番台車からの改造なのだ。なぜ、このような転用があったかと言うと、国鉄時代、この地域の普通列車の主役だった旧型客車の置き換えに、当時、急行運用が減少した455系一族を転用する事になり、その際に、クハ455が不足していたのだ。そこで余剰気味だった直流急行形電車の一部を改造して転用させたのだった。クハ455の400番台車自体、現存する車両は僅か3両。そのうち2両が仙台にいる事になっている。いきなり、そのような珍車に当たった訳である。
特徴あるクハ455-402は屋根上も撮影。
さて、S-71編成は、クハだけではなく、クモハ側も少々変わった車両が含まれている。まずは、クモハ側を普通に撮影してみる。
S-71編成のクモハ側。貫通ホロが付いており、クハとは表情も異なるが・・・
これだけ見ただけでは、ごくごく普通の車両のように見える。しかし、この車両の秘密は車両番号に隠されていたのだ。
乗車した車両番号は、クモハ457-11。455ではなく457なのだ。
ご覧の通り、これまた希少価値の457系だったのだ。457系は、60Hz・50Hzのどちらでも使用できるように作られた車両で、クモハとモハのユニットが10組製造された。JR東日本に現存するのは、この11番を含めて合計3ユニットしかないのだ。
新幹線からの乗り換え時間は、僅かに7分だったので、これだけ撮影していたら、列車はあっという間に出発時間になってしまった。とりあえず、車内に入り、クモハ457-11のボックスシートを1つ確保して、再び車内の撮影を開始した。
昔ながらのボックスシート。
各ボックスシートのテーブルに設けられている栓抜きも健在。
AU12クーラー車の大きな特徴でもあるクーラースイッチ。(クハ455-402車内にて)
全区間、3両編成での運転だったが、各車両、ボックスがまるまる埋まらない部分もあり、車内はどちらかと言えば空いている方だった。それだけに、各車両の車内設備の観察はやりやすく、5分ほどで終了。あとは、MT54主電動機のサウンドと、重苦しい感じながらもどこか軽やかなDT32台車から伝わるジョイント音を楽しむ事にした。急行形ファンにとっては、まさに至福の時だろう。仙台までのおよそ1時間の旅は、あっという間であった。
すっかり陽も暮れた仙台駅に到着。
仙台到着後は、そのまま車両基地へ引き上げとなるので、ヘッドマークはそのままだろうと思っていたのだが、駅停車中に外されてしまった。仙台駅ホームで編成全体を入れてヘッドマーク付きの姿を記録しておきたかったのだが、その夢は実現しなかった。その代わりに、反対側のホームより、珍車のクハ455-402を中心に撮影する事にした。
仙台に到着したS-71編成をクハ455-402側から撮影してみる。
今度はクハ455-402だけを撮影。
この撮影が終わってからおよそ2分後、S-71編成は静かに仙台車両センターへ向けて走り去っていった。思わぬ珍客を見送り、これで、仙台の珍客とはお別れかなと思ったのも束の間、その直後に、今度は隣のホームだが、455系6両編成による常磐線の普通列車が到着したが、この中には、先程のクハ455-402を更に上回る珍車が連結されていた。
S-71編成を見送った後に現れたのは、グリーン車を先頭車に改造したクハ455だった。
このグリーン車改造のクハ、その名はクハ455-609と言うのだが、この車両も先程のクハ455-402同様、不足するクハを補うために、余剰となっていたグリーン車から改造したもので、窓の構造が他車と違うことから、今でも元グリーン車だったということがはっきりと解る。JR東日本管内で現存しているグリーン車改造のクハは、この609号のみとなっており、そう簡単に見られるものではない。せっかく見られたので、今回は車内も観察する事にした。
クハ455-609の車内。グリーン車改造のクハの中には、グリーン車時代の座席をそのまま使用していた車両も存在したが、この車両は、通常の普通車と同じ座席に取り替えられている。
グリーン車改造のクハを組み込んだ常磐線の列車だが、ここでもう一つ、大きな作業が待っていた。それは、増結作業だ。この列車は、6両編成で仙台に到着したのだが、折り返し常磐線いわき行きは、9両編成での運転となる。現存する455・457系使用の列車の中では、おそらく最長の長さとなるだろう。往年の急行列車を髣髴させるような長編成を撮影しておく事にした。
折り返しのいわき行きは9両編成での運転。
いわき方に増結された編成は、角目ライトのリニューアル車。
いわき行き9両編成は、角目ライトあり、元グリーン車ありと、今の仙台の455系シリーズ総出演と言った感じの編成となった。角目ライトのリニューアル車は、嫌われる事も多いのだが、この増結されたS-4編成をよく見てみると、クモハ+モハのユニットは4番、クハは2番とかなりの若番で固められている。リニューアル編成だからと言って侮れない編成だ。
私は、このいわき行きの発車を見送って、455・457系の観察は終了とした。思わぬ車両との出会いもあり、福島からのとんぼ返り大正解だった。
元グリーン車や直流急行形電車からの転用改造車など、珍車の多い仙台の455系一族だが、3月のダイヤ改正でデビューするE721系電車に順次置き換えられることが決定している。今回は撮影できなかった磐越西線の車両も、近いうちに撮影しておかなくては・・・
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コメント
こんばんは。先日の木曜日、3月に廃止になるくりはら田園鉄道のお名残乗車に行ってきました。18きっぷを持っていたこともあり、帰りはのんびりと東北線を乗り継いできたんですが、乗ったのが仙台を17時ちょうどに出る黒磯行き2152Mでした。仙台から黒磯までロングランで走る列車ですので、出来れば455系が就いてくれないかなぁという希望があったんですが、その希望通り455系でした。
そんなわけで、クロスシートの旅を楽しむことが出来たんですが、私が乗った編成にG車改造のクハがつながっておりました。この車両、かつては九州でも同じような車両がいたのを実際に乗ったことがあり、当時はリクライニングシートもそのまま残されていたのを覚えています。さすがに今は残っていないんでしょうが、こうしてみると455系もいろいろと見所が多い車両ですね。
投稿: mattoh | 2007/01/14 21:35
mattohさん、コメント有難うございます。
仙台~黒磯間を455系でのんびり旅されたとは羨ましいです。しかも乗った編成が、クハ455-609を含む編成とは尚更です。九州にも存在するG車改造クハですが、あちらも確かボックスシートに交換したと言う話を聞いた記憶があります。
投稿: TOMO | 2007/01/15 23:24
1991年の夏に、平(現・いわき)~原ノ町間の下りでS―71編成に乗車しました。あの当時は、種別表示が回転幕式でした。クハのAU12日光型クーラーともども、今でも思い出します。
投稿: 岩崎友裕 | 2010/03/27 16:19
岩崎友裕さん、コメントありがとうございます。
この記事でも触れたS71編成に乗られたのですね。当記事で、その当時を思い出していただいた事ともいます。
晩年の仙台地区の455系は、ご覧のように正面の行き先表示がLED化されていますが、これは2004年頃に実施したもののようですから、この姿で走ったのは、3年ほどだったようです。
投稿: TOMO | 2010/03/31 17:24