しなの鉄道に乗る
2番線での撮影を終え、3番線の小諸行きに乗り込む。JRから継承されて今年で10年。所々にJR時代の面影を残してはいるが、全く異なる外観塗装や、一部のドア上に設置されている液晶モニターなどに、しなの鉄道の独自性を感じる。
しなの鉄道の115系ドア上に設置されている液晶モニター。
列車は定刻通り長野を出発。途中の篠ノ井までは、JRの線路を走るが、乗務員は運転士、車掌ともに、しなの鉄道の社員が担当する。長野出発時点では、女性の車掌さんが乗務していた。列車は、篠ノ井からしなの鉄道へ。車庫のある戸倉で少々停車。隣に出庫準備中の169系が見えた。車内からそっと観察。帰りはあの電車だぞと思うと、急行形大好き人間の私はウズウズしてきた。
戸倉を発車すると、ある変化に気づく。車内のアナウンスが自動放送になったのだ。しなの鉄道も合理化が進み、戸倉~軽井沢間でワンマン運転を実施する列車がある。この列車もまさにそのパターンだ。本来なら、長野~戸倉間でも実施したいところだろうが、一部の列車は、JR東日本の車両が入ること、そしてJR東日本区間で3両ワンマン運転が認められるかと言う問題がある。尤も、最近開業した仙台空港線は、4両編成でもワンマン運転を実施しており、JR区間である仙台~名取間でも、そのままワンマン運転を実施しているので、今後、ワンマン運転がさらに広まる可能性はありそうな気はする。
列車は進み、上田に到着。ここで折り返し乗車となるので、出場後、長野までの乗車券750円を購入する。最近になって、JRとの乗り継ぎ割引制度が廃止になり、少々お値段が高くなっていた。上田~長野間も少々割高感が感じられるようになったのではないだろうか。再入場後、小諸方面から赤い115系の長野行きが入ってきた。115系自体は長野駅で撮影済みだが、ワンマン運転区間は撮影していなかったので、上田でもしっかり撮影した。
115系ワンマン列車。ワンマン運転区間では、前面の種別も「普通 ワンマン」と表示されている。
さあ、いよいよ169系を迎える番だ。上田始発なので、真ん中のホームに入るはず。編成全体をしっかり撮るために、人の少ない下りホームから撮影するようにした。17時40分頃、169系回送が入線。短い停車時間を利用して数枚撮影する。
戸倉から回送されてきた169系。
この日の快速609Mに充当されたのは、S54編成(クモハ169-13+モハ168-13+クハ169-13)で、しなの鉄道には、1999年、朝の快速列車9両化に伴う運用増で入線した編成だ。
中間車モハ168-13。
クハ169-13側から編成全体を見渡す。
ここまで撮影したところで、発車まで残り1分少々。私は急いで2番線へと移動。169系に乗り込もうとしたが、2番線から169系を見ると、ある変化に気が付いた。クハ169の乗務員室助手席側の窓に「長野行」の札が下がっていた。
クハ169-13の乗務員室助手席側にある「長野行」の札。
元々、しなの鉄道の169系には、「快速 長野」と言う方向幕が用意されていたはずなのだが、このS54編成は、このような行先札を乗務員室内に掲示している。もしかしたら、後から追加でしなの鉄道入りしたので、方向幕が用意できなかったのだろうか?
クモハ169-13の車内。
クモハ169-13のナンバープレート。緑色の文字となっている。
この車両は、国鉄時代末期からJR移行後に掛けて、リニューアル工事を受け、白地に緑のラインが入った新急行色となって、長野県内を走る急行「かもしか」(後の快速「みすず」)に運用されていた。その名残から、今でも車内のナンバープレートは、当時の車体色にあった緑色の文字なのだろう。
車内の写真を撮っているうちに上田駅を発車した。出庫時に、座席がボックス状にセッティングされていたので、空いている事もあり、1ボックスを1人で使わせてもらった。
長野行き快速609Mは、上田を出発すると、戸倉・屋代・篠ノ井のみの停車で、長野まで32分で走りきる。所々で、往年の急行を髣髴させるような走りを見せており、直流急行形電車の健在振りを見せ付けられたような感じだった。昨年の秩父鉄道3000系引退後、全国では、このしなの鉄道と、富士急に行った「フジサン特急」が直流急行形電車の生き残りとなったが、富士急の場合は、ジョイフルトレインの再改造であるから、本来の姿に近い形で残されているのは、しなの鉄道の169系が最後の直流急行形と言えるかもしれない。
上田からの急行形電車の旅はあっという間に終了。終着の長野には、定刻通りの到着であった。最後に、長野駅構内でも169系の写真を数枚撮影した。
折り返しは、定員制の快速しなのサンセット号。上田まで途中駅は一切停車しない。
S54編成は、先頭車の屋根の塗装に特徴がある。
我が家の模型の中には、しなの鉄道の169系が3連4本在籍している。本物どおりの本数で、このS54編成は、最初に購入した9両セットの中に含まれているのだが、購入したときから、この屋根の塗りわけが気になっていた。実車通りの模型化だというので間違いないのだが、今回の撮影で、その塗りわけが今でも残っているのが良く解った。
しなの鉄道の169系、既に入線から10年が経過しようとしている。元々、古い車両なだけに、早い段階から後継車の検討は始めていた筈。実は、2006年度中を目処に新型車両を投入すると言う計画があったようだが、その後の財政難などにより、計画は白紙に戻ってしまった。よって、もう暫くは老兵の活躍ぶりを見ることは出来そうだ。直流急行形電車の生き残りでもある同車両達が、パンタグラフを下ろす最後の日まで、何事も無く走り続けてほしいと私は願っている。そして、最後に引退する事が決まったら、1本ぐらい湘南色に復元してもらえないかなあ。そう思っているファンは、少なくない筈だ。
参考
しなの鉄道に乗り入れるJR東日本所属の115系。方向幕は、赤地の物が特別に用意されていた。
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コメント
まいどです。
長野遠征お疲れ様でした。しなの鉄道で169系が健在なのを見ると嬉しくなってきますね。私も行きたくなってきました。
S54編成はもしかしたら飯田線内で乗ったことがあるかもしれません。この簡リクの座席に見覚えがあります。いやぁ、懐かしいですねぇ・・・
また、画像を見てビックリしたのですが、助手席側にATS-Pと思われる装置が付いていますね。かつて長野にいた頃は臨時列車で首都圏に顔を出す機会がありましたから、その名残でしょうか?
投稿: みなづき | 2007/06/27 00:14
みなづきさん、コメント有難うございます。
ATS-Pの件、よく気が付きましたね。流石です。仰るとおり、この編成には、ATS-Pが取り付けられています。10年ほど前の電車編成表を見ましても、当時の長野総合車両センターに配属されていた頃より、Pのマークが付いていました。おそらく、「ファンタジー舞浜」で京葉線にも入線しているでしょう。この当時は、サハ165を連結していますから、当然、飯田線にも入線していたはずです。
S54編成は、追加でしなの鉄道入りしたと言う点がポイントですね。平成9年、しなの鉄道転換時に譲渡された3本は、JR東日本側にATS-P取付車を温存する目的で、当時の長野車と松本車を差し替えています。従ってS51~53の3本は、ATS-Pが付いていない筈です。
しなの鉄道の169系、実に良かったです。今度は有給休暇を利用して、平日朝の9両編成も撮りたいです。
投稿: TOMO | 2007/06/27 01:06
私はテレビのドラマ「特急田中3号」や「もしもツアーズ」でこのしなの鉄道が紹介されていたのを見たので1度は乗ってみようかなと思いました。田中3号で照美と三島君が別れたのは軽井沢の次の中軽井沢駅のホームでした。ゴミ箱に湘南モノレール30周年記念腕時計を捨てたりしらシーンがあったんです。あと、旧信越本線横川ー軽井沢間の廃線区間を歩いてみたいと思ったんですが、立入り禁止らしいのでやめときます。大学に合格したら、速攻で「碓氷鉄道文化むら」へ普通列車で行き、EF63の運転資格を取りに行こうと思ってます。宿泊有で・・・。
投稿: mi-ha- | 2007/06/29 23:05
mi-ha-さん、コメント有難うございます。
そう言えば、ドラマの「特急田中3号」の中で、しなの鉄道の中軽井沢駅でのシーンがありましたね。塗装はちょっと違っていますが、115系・169系が主役として活躍し、更にはEF64牽引の貨物列車も運転していますので、訪れてみる価値は有る鉄道です。
碓氷峠区間ですが、全区間は通行できないものの、鉄道文化むらからも程近い、旧丸山変電所付近は、一部に歩ける場所もあったかと思います。そう言った所を訪れてみるのも良いかもしれませんね。
投稿: TOMO | 2007/06/30 01:24
こんばんわTOMOさん
遠征お疲れ様です
深く敬意を払います
しなの鉄道のカラーリングはインパクトがあっていいですね
私もこんなカラーリングが好きです
169系がヤッパリ素晴らしいですね
投稿: 如月瑞穂 | 2007/06/30 19:15
如月瑞穂さん、コメント有難うございます。
碓氷峠廃止直前に、JRからしなの鉄道への転用改造を早期に実施した車両を使って、しなの鉄道の車両が報道公開されたときは、何と言うカラーだとビックリしましたが、あれから10年経ち、こうやって落ち着いて見直しますと、なかなか良いカラーですよね。
169系、老朽化はかなり深刻な問題だとは思いますが、貴重な車両ですので、何とかして維持してほしいですね。
投稿: TOMO | 2007/07/01 23:50